予防医学 生活

タバコと禁煙 - 払い過ぎた命の時間、返ってきます!

禁煙

 

タバコは全世界レベルで、予防できる死因の第1位です。

禁煙、つまりタバコと決別することには、計り知れないメリットがあります。
予防医学の観点では『タバコをやめる、はじめない!』がベストです。

それは多くの人が知っていることですが、禁煙が難しいことも事実です。

この記事ではタバコによる自分と他人への被害を説明し、そしてタバコをやめることで取り戻せるものについて解説します。

人類はタバコに対して、多くのコストを支払ってきました。
あまりにも大きな過払いです。
みんながタバコを手放すことで、数兆円規模の価値を取り戻せます。

取り返せるものには、命の時間さえ含まれています!

 

タバコによる損害

タバコは健康にも経済にも悪影響を及ぼします。

喫煙者の寿命は平均で 8~10年も短くなります。
その短くなった人生は、多くの病気を抱えて過ごすことになります。

未来の世界を見るためには、タバコを手放すのがベストです。

 

タバコによる健康被害

タバコはあまりにも多くの病気を増加させます。
そして病気になるリスクは、喫煙したタバコの本数が増えるごとに大きくなります。

喫煙によってリスクが増加する病気は数多くあります。
そのトップ3を解説します。

  1. 心臓や血管の病気、脳卒中
  2. がん
  3. 肺の病気

心臓血管病

タバコを吸うことによって、血管には動脈硬化と呼ばれる変化が起こります。
しなやかなチューブである血管が固まる変化です。
それによって、血管の内側が狭くなったり、血管が弱くなったりします。

心筋こうそくや狭心症は、タバコによって増加する病気の代表です。
心臓を取りまく血管が狭くなり、詰まることで発生します。
心筋こうそくで死亡することも多くあります。

手足の血流が悪くなることもあります。
また内臓の血流が悪くなることで、腎不全などを起こします。

脳の血管がつまる脳卒中、破れる脳出血も、タバコで増える血管の病気です。
脳の障害によって手足が動かなくなったり、自分らしさが失われます。

1日に2箱 (40本)のタバコを吸う人は、心筋こうそくになる確率が9倍です。
(Lancet 2006. PMID 16920470)

どれか一つの病気が増えるのではなく、血管に関わる全ての病気が増加します。
そのため脳こうそくや心筋こうそくが、同じ人に続けて発生しやすくなります。

一つひとつの脳こうそくや心筋こうそくを治療するよりも、その原因となるタバコを無くすことが必要です。

 

タバコで増加するガン

タバコで増加するガンの代表は肺がんです。
喫煙によって、肺がんの発生率は約 5倍になります。

のどのガン、食道のガンもタバコによって増加します。

女性の乳がん、男性の前立腺がんも、タバコによって増加することが知られています。

喫煙はガンを発生させやすくします。

 

肺の病気

タバコによって増加する肺の病気は、肺がんだけではありません。

COPD(シーオーピーディー、慢性閉塞性肺疾患)は喫煙によって肺が変質する病気です。
COPDの80%は喫煙が原因です。

COPDの症状は、呼吸が苦しくなることです。
特に息を吐くことが難しくなります。

また肺の中の、呼吸によって酸素を取り入れる小さな袋(肺胞)も破壊されます。
そのため呼吸で酸素を取り込みにくくなり、重症化すると常に酸素ボンベが必要になることもあります。

少しの動作でも息切れを起こしたり、咳や痰に悩まされ続けるといった症状があります。

タバコを吸う量が多くなるほど、COPDは重症化します。

喘息をもっている人は、タバコによって喘息発作を起こすことがあります。

 

タバコによって増える その他の病気

他にもタバコによって増加する病気が多くあります。
それには以下のようなものがあります。

タバコによって増える病気

糖尿病
骨粗鬆症
不妊症(男性が原因の不妊、女性が原因の不妊)
胃かいよう、消化管かいよう
歯周病(歯ぐきの病気)

 

受動喫煙による健康被害

タバコは喫煙している人だけではなく、その周囲にいる人にも健康被害を及ぼします。
近くの人の喫煙によって生じる煙を吸うことが『受動喫煙(じゅどうきつえん)』です。

受動喫煙による健康被害は、タバコを吸っている人に生じる健康被害と同じです。
心臓や血管の病気、ガン、肺の病気、どれも増加します。

同じ部屋にいる人がタバコを吸うと、煙と同じくタバコ由来の有害物質が空間にただよいます。
この有害物質を吸い込むことで、喫煙者と同じ健康影響を受けてしまいます。

誰かがタバコを吸った空間にいるだけで、受動喫煙による健康被害は発生します。
これは『サードハンド・スモーク』と呼ばれる現象です。
空気中に残ったタバコ由来の化学物質、ソファやカーテンなどの家具に付着した化学物質は、その空間にいる人に吸い込まれます。

タバコを吸わない人は、タバコが吸われた空間を徹底的に避けましょう。

サードハンド・スモークについて、厚生労働省が公開しているウェブページに詳しく説明されています。

 

以前は喫煙者の割合が多かったので、自分はタバコを吸っていなくても、ご家族の誰かが喫煙していたこともあるでしょう。
過去の受動喫煙をさかのぼって、誰かを責めてほしいわけではありません。
これから先、タバコを吸わない人への受動喫煙による被害をゼロにしてほしい。
それが当ウェブサイトのメッセージです。

 

タバコによる経済への損失

厚生労働省が行った研究では、2015年のタバコによる経済的な損失は2兆500億円でした。
同年の国家予算が約 96兆円だったことを考えると、タバコ単独での経済的損失はあまりにも大きかったと言えるでしょう。

タバコは医療費を増加させる大きな原因です。
タバコが原因となる直接的な医療費は1兆 6,900億円でした。
受動喫煙によって必要となった医療費は 3,300億円でした。

またタバコが関与している火災などで 1,000億円の損害があったと報告されています。

これだけの豊かさが、タバコによって失われています。

 

禁煙

 

禁煙するメリット

禁煙することで「人生最大のメリットを得る」と言っても過言ではありません。

健康上のメリットとして、病気のリスクを下げ、心肺機能を回復させ、さらに失われるはずだった命の期間を取り戻せます。

タバコに払っているお金も、禁煙に成功すれば支払わなくても済むようになります。

 

取り戻せる! 命の時間

禁煙することで、失われるはずだった命の時間を取り戻すことができます。
タバコと人生の時間に関するエビデンスを紹介します。

5大医学誌のひとつであるBMJに、禁煙に成功した人々を追跡した研究が報告されました。
(BMJ 2004. PMID 15213107)

この研究では喫煙している、または喫煙していたが禁煙に成功した、3万4,000人の男性医師を追跡しています。
喫煙に関する生活習慣のデータを1951年に集め、彼らを 50年もの間フォローした壮大な研究です。

喫煙を続けていた人々は、喫煙していなかった人と比べて、平均して 10年早く死亡しました。

もう一つ、とても重要な事実が明らかになりました。
禁煙に成功した時期が早ければ早いほど、失われる寿命が短くて済むことです。

60歳で禁煙した人々は、喫煙を続けた人々よりも平均で 3年長く生きました。

50歳、40歳で禁煙した人々は、喫煙を続けた人々よりも、それぞれ平均で 6年, 9年長く生きました。

30歳で禁煙した人々は、喫煙を続けた人々と比べて平均で 10年長く生きることができました。

 

生涯にわたってタバコを吸った人々は、吸わない人々よりも人生の時間が約 10年短くなりました。
30歳までに禁煙に成功した人々は、喫煙を続けた人よりも 10年長く生きました。
禁煙に成功することで、失われるはずだった寿命を取り戻したかのようです。

禁煙は早ければ早いほど、そのメリットが大きくなるという力強いエビデンスです。

投資のような不確実性はありません。
早く喫煙に成功することで、必ず人生に利益が得られます!

 

時間とともに大きくなる禁煙メリットのボーナス

アメリカのヘルスケア組織 St. Joseph's/Candlerが公開している、禁煙で取りもどせる健康をもとに解説します。

 

禁煙すると、時間経過とともに多くの健康が返ってきます。

  • 20分後には心拍数と血圧が落ち着きます。
  • 12時間後には血液中の一酸化炭素が正常に戻ります。
  • 2週間から3ヶ月後に、全身の血流が改善し、肺の機能が改善します。
  • 1~9ヶ月後に、咳や息切れが減ります。
  • 1年後に心筋こうそくなどの心臓病の発生率が半分になります。
  • 5年後にタバコに関連するガンの発生率が半分になります。脳卒中の発生率はタバコを吸わない人と同じレベルになります。
  • 10年後に、肺がんで死亡する確率が半分になります。
  • 15年後には心臓病の発生率が、タバコを吸わない人と同じレベルになります。

禁煙のメリットを最大限に高めるため、タバコには一生の別れを告げましょう!

 

タバコを減らすじゃダメ! 完全な禁煙を!

タバコに限らず、何かをガマンするときに「少しくらいなら...」という気持ちになるのが人間です。
ダイエットをしたいけれど、少しだけ、と思って食べ過ぎる。
お酒をやめると決心したけれど、少しだけ、と思って一杯飲む。

タバコも「少しくらいなら...」で良いのでしょうか?
答えは "NO" です!
わずかなタバコでも、大きな健康被害をもたらします。
完全な禁煙を目指しましょう。

少量のタバコを吸っている、29万人を追跡した研究があります。
少量のタバコとは、1日に 1本あるかないか、または1日あたり 1~10本のことです。
(JAMA Intern Med 2017. PMID 27918784)

調査された人々は、データを集める時点では1日あたり 1本以下、または1~10本でした。
その多くの人々が、以前はもっと多くのタバコを吸っていたと回答しています。
つまり調査対象となった人々は、昔はたくさん吸っていたけれど、なにかのキッカケで吸う量を減らした人たちです。
調査開始の時点で、ほとんどの人が 60~80歳でした。

6年半ほど期間での死亡率を調査しました。
すると1日に 1本あるかないかという程度の喫煙でも、喫煙しない人と比べて死亡率が 2倍に増加していました。
1日に 1~10本の喫煙を続けた人は、喫煙しない人と比べて死亡率が 2.6倍に増加していました。

多くタバコを吸っていた時期が無く、ずっと 1日に 1本あるかないかといった喫煙習慣の人でも、全く吸わない人と比べると死亡率は 1.6倍に上昇していました。

この研究から言えることは、タバコは 1本でも健康を失わせる、ということです。

「完全な禁煙を目指すべき」と証明するエビデンスです。

 

タバコとお別れ

 

禁煙すると体重が増える?

「タバコを吸っていると体重が減る」と言われることがあります。
そして「禁煙すると体重が増える」と言われることもあります。
これらは正しいのでしょうか?

部分的には正しいですが、体重管理の意味を考えると絶対に禁煙するべきです。

タバコによる体重減少は消耗です。
運動による体重減少とは異なり、健康的な体重コントロールではありません。
体重といっしょに身体能力、エネルギー、そして寿命を減らしている状態です。

多くの場合、体重が一時的に 2~5kgくらい増えます。
これはタバコによって失われる健康被害や価値と比べると、デメリットとなる体重増加ではありません。

体重増加を理由に禁煙を遠ざけることは、かしこい選択ではありません。

 

禁煙する タバコという名の病気を治療する

多くの人が禁煙に成功しています。
これから禁煙しようとしている人にとって、勇気づけられる事実です。

タバコをやめられないのは、意志の問題だけではありません。
それは『ニコチン依存症』という病気になっているからです。

ニコチン依存症は、タバコが欲しくなる精神的依存、ニコチンが切れると身体に影響があらわれる身体的依存、2つの依存症です。

禁煙とは『ニコチン依存症』という病気を治療することです。

禁煙するには様々な方法があります。
認知行動療法や、禁煙補助薬、カウンセリング、アプリの利用などです。
どれか一つの方法で禁煙するよりも、複数の方法を組み合わせ、完全な禁煙をめざすことをオススメします。

そして病気の治療ですので、通院することで達成するのがベストです。

 

禁煙外来がベスト

禁煙を実現するために、最高の方法は『禁煙外来でみてもらう』ことです。

禁煙の専門家である医師が味方になってくれます。
禁煙を目指す方にとって、最良の禁煙方法を提案してくれます。

「禁煙したい」と思っている方は、今すぐに近くの禁煙外来を検索しましょう。
これ以上の損をしないために、行動に移すタイミングは「今すぐ」です。

 

アプリによる禁煙

医療におけるデジタル利用は、『治療アプリ』を処方する時代になっています。
欧米で既に行われている、デジタル治療という治療法です。

日本で初めて保険適用されたアプリとして、『CureApp SC』があります。

呼気COチェッカー(息に含まれる一酸化炭素を検出する機器)と組み合わせて禁煙に導きます。
毎日の禁煙の状況を記録し、チャット機能でAIによるアドバイスを受け、禁煙マインドを維持してくれます。
このアプリを利用することで、禁煙の成功率が上昇したというエビデンスもあります。
(NPJ Digit Med 2020. PMID 32195370)

これは薬と同じように、医療機関で処方されます。
上記の公式ウェブサイトから、取り扱い医療機関を検索することもできます。

 

 

禁煙をサポートするウェブ情報

日本医師会による、とても分かりやすいウェブサイトを紹介します。
タバコを吸わない人も、ぜひ読んでください。

 

まとめ 人類はタバコと決別を

この記事ではタバコによって失われる健康、そして禁煙による大きな利益を解説しました。

ベストの健康状態で生きる世界を実現するため、私たちはタバコを無くさなければいけません。

次の世代が息を止めなくても済むように、私たちはタバコと決別しましょう。

大事な点をまとめます。

 

まとめ

タバコは全世界で予防可能な死因の第1位! 命の時間、価値、多くのものがタバコによって失われています。

タバコは心臓や血管の病気、脳卒中、がん、肺の病気、他にも多くの病気を爆発的に増加させます。タバコによって8~10年の寿命が短くなり、多くの病気を抱えた人生になります。

受動喫煙によって、タバコは他人の健康も失わせます。タバコを吸ったあとの空間に入るだけで、受動喫煙が起こります。

タバコによって日本は年間2兆円を失っています。

禁煙に成功すると、タバコで失った健康が取り戻せます。そして禁煙するのが早いほど、取り戻せる健康は大きくなります。

禁煙すると、時間とともに多くの健康を取り戻せます。

タバコは1日1本でもダメ! たったこれだけでも死亡率は2倍になります。

自力での禁煙は難しい。確実にタバコと決別するために、禁煙外来を利用しましょう。

 

 

 

 

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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