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新型コロナウイルスのワクチン

COVID-19

2021年2月から、日本でも新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりました。
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のパンデミックに対して、大きな進歩となる可能性が期待されています。

皆様もワクチンについて、知りたいことが多いのではないかと思います。

ワクチンは COVID-19に対してどれだけ効果があるのか?
ワクチンは安全なのか?

これらの疑問が解決されるように、情報をまとめ、提供していきたいと思います。
もちろん科学的な事実、エビデンス、信頼できる情報源、これらの要素を重視します。

 

この記事の重要メッセージ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンは、自分自身をCOVID-19から守るためでもあり、パンデミックを収束されるためでもあります。

ワクチンを接種すると、ワクチンを接種しない場合と比較して withコロナ時代の生存率が向上します。
ワクチンの安全性は多数の研究で証明されています。

ワクチンは 2回接種することで効果を発揮します。

ワクチンの副反応には発熱や倦怠感、関節痛などがあります。いずれも市販されている鎮痛薬などで症状を軽減することができます。

 

情報源

信頼できる情報源とはどのようなものでしょうか?
それは以下のような要素を揃えたものです。

  1. 政府や機関などの公式発表。
  2. データに基づいた、科学的事実(エビデンス)を公開しているもの。
  3. 特定の組織や団体、個人の利益を誘導しようとしていないもの。
  4. 権威ある専門家の意見。

信頼できる情報とは、100%確実な真実を提供してくれるわけではありません。
現時点で最も確実性の高い情報、という位置づけです。

一方で信頼性の低い情報源も多くあります。
アクセスされる回数を目的としたもの、不安を煽るようなセンセーショナルなもの、根拠のある無しに関わらず情報を集めて混合したもの。
インターネットには情報があふれており、その中には信頼性の低いものも多く含まれています。
しかし、これらを見分けるのは専門的な知識がなければ難しいでしょう。

以下では具体的に信頼できる情報源を紹介していきます。

 

厚生労働省ホームページ

日本の厚生労働省のホームページです。
「日本におけるワクチン接種の実情」について、公式な情報を提供しています。

 

WHO 新型コロナウイルス感染症

WHO (世界保健機関)が公開している、COVID-19についての情報ページです。
ワクチンについての最新情報が集積されています。
コロナウイルスについて、行政機関向けの対策情報、最新の感染レポートも公開されています。

 

権威ある医学雑誌

これらは世界で最も権威ある医学雑誌のホームページです。
その信頼をかけて情報を提供してくれています。
ただし、基本的には医師が読むためのものですので、非常に難解です。

もちろん他にも信頼性の高い情報源は多くあります。
これらの情報源を参考に、このSave Bookでは できるだけ分かりやすくワクチンについて説明していきたいと思います。

 

ワクチンとは何か?

ワクチンを接種することで、自分の体が感染症に対する免疫を作れるようになります。
はしか、おたふくかぜ、と言った感染症は一度かかると免疫ができ、感染に対する抵抗力ができて感染しなくなります。
このような免疫を作れるようにする人工的な手段がワクチンです。

ワクチンによる免疫で得られる抵抗力には様々な程度があります。
全く感染しなくなる程度から、感染しても症状が軽くなる程度まで、様々です。

製法や有効性の仕組みは、ワクチンによって異なります。
通常、ワクチンを接種することが原因で感染することはありません。
その理由は、ワクチンはウイルスや細菌を弱毒化(病原性を弱めたもの)したり、感染源を構成する物質の一部だけを使っているからです。

 

新型コロナウイルス (COVID-19) のワクチン

日本でまず接種することになる、ファイザー社から供給されるワクチンについて説明します。
厚生労働省から発表されている情報を中心に、まとめていきたいと思います。

このワクチンは 2回の接種を行うことで、コロナウイルスに対する免疫を得ることができます。
1回目の接種から 3週間後に 2回目の接種を受けてください。
もし3週間後から遅れても、できるだけ早く 2回目の接種を受けましょう。

このワクチンは 16歳以上を対象に接種されます。
それより下の年齢については、今後の治験で安全性と有効性が確かめられれば、適応が拡大する可能性があります。

ワクチン接種の順番は以下のように予定されています。

  1. 医療従事者
  2. 高齢者 (令和3年度中に65歳に達する方)
  3. 高齢者以外で基礎疾患を有する方、高齢者施設等で従事されている方
  4. それ以外の方

このワクチンは全額公費で接種が行われる、とのことです。
つまり国民には金銭的な負担はありません。

接種は任意であり、強制ではありません。
ご自身の判断と同意のもとで、接種するかどうかを決めてください。

 

ワクチン接種によって期待できること

ここでは新型コロナウイルスのワクチンを接種することで期待できる効果を説明します。
この記事を記載している2021年2月24日時点では、ワクチンの接種が始まったばかりです。
測定されたデータは限られています。
したがって科学的事実の確認も、これから進行していきます。
ここでは医学の一般論や、医師としての意見に基づいて、概ね正しいと信じられることを説明します。

 

ワクチンを接種した本人に対する効果

ワクチンを接種した本人に期待される効果として、第一にコロナウイルス感染症に対する免疫の獲得です。

免疫を獲得すると、具体的にどのような状態になるのでしょうか?
期待して良い最大の効果は、新型コロナウイルスに感染しなくなることです。

また新型コロナウイルスに感染してしまった場合でも、症状を軽くできる可能性があります。
症状を抑える程度は様々ですが、ほぼ無症状から、治癒が数日早まる程度まで、どのような効果になるかは分かりません。

またコロナウイルスの変異型に対しても効果が期待できます。
その効果は感染しない状態から、症状が少し軽減される程度まで様々な幅があると思われますが、有効性があるかもしれません。
変異株への有効性については医学の一般論でも説明することが難しいので、科学的な検証を待つ必要があります。

 

ワクチンによる社会的な効果

このワクチンを社会全体の人が接種すると、社会全体でのコロナウイルス感染症を減らせることが期待できます。
接種した本人が感染しないということは、その人が他人に感染させることもなくなるということです。
つまり免疫をもった人は、基本的に他者に新型コロナウイルスを感染させることがなくなります。

これは集団免疫という状態です。
社会に参加している人が全体として、ワクチンによってコロナウイルスに対する免疫をもった場合、『コロナウイルスに感染しない、感染させない』社会になることが期待できます。
健康面のみならず、経済面でも甚大な被害をもたらしているコロナウイルスとの戦いに勝てる可能性があります。

そのため、集団免疫の獲得を期待して、コロナウイルスのワクチンをできるだけ多くの人に接種してほしいと、医療者は考えています。

 

ワクチン接種による副反応

このワクチンの接種が心配される理由は、副反応があることでしょう。
副反応はコロナウイルスに対するワクチンだけでなく、あらゆるワクチン、そしてあらゆる薬に対して考えられることです。

今ある情報を合わせて考えた場合、筆者は医師として「このワクチンの安全性は高い」と考えています。
そう考える理由を説明するため、副反応について順を追って述べます。

まずはワクチンを注射することによる、一般的な副反応です。
これは注射した部位の痛みや腫れ、だるさ(倦怠感)、頭痛や発熱です。
風邪をひいたような症状、と言えばイメージしやすいと思います。
これらの症状は1~2日で自然に改善します。
症状が辛い場合は、一般的な解熱鎮痛薬で和らげることができます。
かぜ薬に含まれているアセトアミノフェンやイブプロフェンが有効です。

そしてアレルギー反応について説明します。
これについては、すでに行われた臨床試験のデータを示した論文があります。
途中で『アナフィラキシー』という言葉が登場しますが、少し下の方で説明します。
(CDC 2021. PMID 33444297)

2020年12月23日、189万人にファイザー社のワクチンを初回投与しました。
接種した人の 0.2%にあたる 4,393件で副反応のレポートがありました。
これは約 500人に 1人の割合です。
軽いものも、重いものも含まれています。

そのうちの175名は、アナフィラキシーを含む重度のアレルギー反応の可能性があるとしたものでした。
これは約 0.01%であり、およそ1万人に1人の割合です。

この175名のうちアナフィラキシーと確定したのは21名で、およそ 10万人に1人の割合でした。
21名のうち 17名は過去にアレルギーを起こしたことがある人で、そのうち7人は過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人でした。
症状が出現するまでの時間は、平均して 13分でした。
そのうち20名は、症状が改善して帰宅したところまで確認されました。
残る 1名について、その後の情報が追えなかったようで、どうなったかは分かりません。

 

アナフィラキシー

アナフィラキシーとは症状の強いアレルギー反応のことです。

通常のアレルギー反応は、花粉症に代表されるような かゆみ、鼻水やくしゃみ、じんましんなどです。

それに対してアナフィラキシーでは、全身に出現するじんましん、呼吸の経路が腫れることによる呼吸困難、血圧低下による血液の循環不全、腹痛や嘔吐・下痢といったお腹の症状が組み合わさって出現します。
これらの症状のうち、2つ以上が組み合わさって出るものや、1つであっても生命に危険な影響を及ぼすものがアナフィラキシーです。

スズメバチに刺されて死亡する例がありますが、そのほとんどはアナフィラキシーによると言われています。

薬の注射などで起こる場合、多くは15分以内に症状が出現します。
また喘息やアレルギー体質の人、これまでにアナフィラキシーを起こしたことがある人は、アナフィラキシーを起こしやすいと言えます。

筆者が救急外来で勤務している経験で言えば、アナフィラキシーはすべてが重篤なわけではなく、適切な治療をすれば大きな問題を起こさない場合が多いです。
確かにアナフィラキシーの中には危険な状況で受診する人もいますが、そのような場合も一般的には治療によってすぐ状態が改善します。
とはいえ、日本の死因統計では年間50~70人がアナフィラキシーで死亡していますので、注意は必要です。

治療で最も有効なのはアドレナリンの注射です。
一般的な病院や医院には必ずある薬剤で、腕や太ももの筋肉に注射します。
すると ほとんどの場合5~10分程度でアナフィラキシーの症状が改善します。

またアレルギーの治療薬で抗ヒスタミン剤という種類の薬も使用されますが、有効性の面ではアドレナリンに劣るので、これは補助的な役割です。
軽症のアナフィラキシーは抗ヒスタミン剤だけで治る場合もあります。

もう一つ重要なのが点滴による水分の補充です。
特にアナフィラキシーで血圧が下がる状態をアナフィラキシーショックと言いますが、このような状態に対して水分補充は有効です。

これらのアナフィラキシーについての知識をコロナウイルスのワクチンに応用すると、以下のようになります。

10万人に1人と確率は低いが、アナフィラキシーを生じることがある。

アナフィラキシーは適切に治療すれば、ほとんどの場合は助かり、特に後遺症も生じない。

喘息の人、アレルギー体質の人、過去にアナフィラキシーを起こした人は、アナフィラキシーを生じやすいので注意が必要。

ワクチン接種を受けたら、少なくとも 15分はその場で経過観察するのがよい。

この注意点に気をつければ、コロナウイルスのワクチンによるアナフィラキシーにも安全に対応できます。

 

ワクチンに対する説明

世界で最も権威ある医学誌、New England Journal of Medicineの YouTubeチャンネルからの動画です。
感染症のスペシャリストであり、ハーバード医学校の教授であるポール・サックス氏の説明です。
その内容をまとめます。

  • このワクチンはコロナウイルスが持つメッセンジャーRNA (ウイルスを構成する遺伝情報の設計図のようなもの)を用いたワクチンである。このメッセンジャーRNAはコロナウイルスの表面のスパイク(トゲトゲ)だけを作る設計図である。
  • ワクチンによってコロナウイルスの表面にあるスパイクと同じタンパク質が人体の中に作られ、今度はそのスパイクに対する抗体が作り出される。
  • 抗体によって本物のコロナウイルスは感染力を失う。
  • すでに行われた臨床試験では、ワクチンは95%のコロナウイルス感染症に有効である。
  • 症状があっても麻疹のような症状(発熱、せき、鼻水など)くらいになる。
  • ワクチンは高齢者、基礎疾患のある人などを含めて、いろんな人に有効だった。
  • このワクチンの臨床試験は2020年の夏に始まったばかりで、パンデミックに対して緊急的に始まったものである。
  • 臨床試験でワクチンは非常に安全であることが確認された。ワクチンとプラセボ(人体に影響のない食塩水の注射)を比較したところ、ワクチンによる特別に重大な副作用は認められなかった。
  • ワクチンを接種したことによる一般的な副反応はある。注射した部分の痛み、不快感、頭痛、発熱など。これらの症状は1~2日くらいで自然に治る。薬が必要であればアセトアミノフェンやイブプロフェン(どちらもかぜ薬などに使われる一般的な解熱薬)で対処できる。非ステロイド性消炎鎮痛剤(一般的な解熱鎮痛薬)でもよい。
  • アナフィラキシー(重度のアレルギー反応)などの重大な副反応は、10万人に 1人の発生率だった。この副反応が発生しないか確認するために、少なくとも 15分の経過観察が必要だ。アレルギー体質の人や、アナフィラキシーを起こした人は少なくとも 30分の経過観察を要する。

 

もう一つ、ワクチンの仕組みについて分かりやすい動画を紹介します。
こちらはファイザー社ではなくモデルナ社のものを説明していますが、仕組みは同じです。
音声は英語ですが、映像で上記のポール・サックス氏が説明した内容を表現しているので分かりやすいと思います。

 

まとめ

コロナウイルスのワクチンについての情報をお伝えしました。
この記事を書いている2021年時点で、ワクチンは実際に使われ始めたばかりです。
これから新しい情報が加わっていくと思いますので、今後もできるだけ新しい情報を科学的根拠とともにお届けしたいと思っています。

このワクチンの接種は強制ではなく任意ですが、コロナウイルスによる被害を最小限に抑えるため、できるだけ多くの人に接種してほしい、というのが医師としての筆者の意見です。

この記事の情報をまとめます。

まとめ

コロナウイルスのワクチンは高い有効性が確認されている。

このワクチンは 2回接種することで有効になる。1回目の接種から 3週間後に 2回目の接種を受ける。

ワクチンの安全性は高いと考えられる。より安全にするため、接種したあと15分はその場で経過観察するのがよい。アレルギー体質の人や、アナフィラキシーを生じたことがある人は注意が必要で、30分の経過観察を推奨する。

アレルギー以外では注射した部位の痛み、かぜに似た症状が出現しやすいが、1~2日で自然に治る。

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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