救急・応急処置

キズの応急処置 - 救急医が教える、かんたんセルフケア!

キズの応急処置

 

転んですりむいたキズ、包丁で指を切ったキズ、動物に噛まれたキズ。

全てのキズに対して行うべき、たった2つの応急処置を解説します。
この2つを学ぶだけで、医師と同じレベルでキズの管理ができるようになります!

扱いが特別なキズは受診が必要なので、それについても解説します。

毎日キズを診療している、救急医がケアの方法をお伝えします。
医学的に正しいキズの管理方法です。

 

皮膚の構造 キズを理解する

皮膚の構造について、キズの管理に必要なことを解説します。
難しいことはナシです。

皮膚は表面から表皮、真皮、皮下組織という層になっています。

すりむいたキズは、表皮のキズです。
少し深いキズでも、真皮にとどまることが多いです。
真皮までのキズは縫合などの処置を行わなくても、自然に治ります。

さらに深いキズは、皮下組織に及びます。
皮下脂肪の深さです。
キズが皮下組織まで及び、長さが1cmを超える場合は、縫合が必要です。
縫合しなくてもキズはふさがりますが、1~2ヶ月かかるのと、瘢痕(はんこん)化して見た目にも機能的にも悪くなります。

一般の方にとって、縫合すべきキズを判断することは難しいです。
「自然に治る」、と経験的に思えるキズは、受診しなくても治る場合が多いです。
しかし、過去の経験に照らし合わせて、「明らかに深い」キズは受診するのがよいでしょう。

 

キズに対する応急処置

すべてのキズに有効な、たった2つの応急処置を解説します。
誰でもできる、簡単な内容です。

自分のキズ、誰かのキズ、どんなキズも適切に扱えるようになりましょう!

 

応急処置1 水道水で水洗いする

キズに対して最も有効な応急処置は水洗いです。

日本の水道水は清潔です。
洗面所や台所の水道水で洗えばOKです!
(海外では国によって水道水が汚染されている場合があります)

水洗いの目的は感染予防です。
キズに細菌が感染すると、治療が遅れます。
感染自体が重症になることもあります。
すぐに水洗いしてください!

水が染みますが、大量の水道水で洗い流すのがベストです。

傷口に対して、消毒薬は不要です。
キズの治りが遅くなります。

 

水道水

 

応急処置2 圧迫して止血する

出血している場合、キズを直接おさえて止血しましょう。

圧迫止血と言います。
止血の基本的な方法です。

キズを圧迫するときは、清潔なガーゼやタオルで押さえましょう。
ティッシュ・ペーパーでもOKです。

汚れたもので圧迫するのはダメです。
キズを扱う原則は、清潔にすることです。

やってほしくない止血の方法は『ヒモで縛る』ことです。
たとえば、指の出血を止めようとして、指の根元や手首を縛るのは間違いです。
逆に出血が増えることもあります。
医師や救命士など、専門知識を持った人でなければ『縛る止血』は避けましょう。

出血が止まらなかったり、吹き出すような出血の場合は、圧迫しつつ受診しましょう。

 

応急処置のあとは

きれいな水で洗い流し、圧迫で止血したあとは、キズを清潔に保護しましょう。

多くのキズは絆創膏で保護すればOKです。
保護する目的は、キズが汚れないようにすることです。

感染を防止することが目的です。
血によって衣服が汚れないようにする意味もあります。

浅くて広い擦り傷などは、絆創膏でカバーしきれないこともあります。
このようなキズは、ガーゼをのせて、包帯で巻けばOKです。
完全に覆えてなくても治ります。

日々のケアは、やはり水洗いです。
少なくとも1日1回、できれば3回くらい水洗いしてください。

 

扱いが特別なキズ

キズの中には、応急処置だけではケアが十分ではないものがあります。

そのようなキズを治療するためには、受診が必要です。
小さなキズなら近くのクリニック(外科系がよい)、重傷の場合は救急外来を受診しましょう。

ここからは、受診が必要な『特別なキズ』について解説します。

 

勢いよく出血するキズ

「ピューッ」と血液が吹き出している場合、動脈が傷ついていることがあります。
このような出血を伴う場合は、救急受診が必要になります。
圧迫しても出血の勢いが弱くならないときは、危険な出血量になることがあるので、救急車を呼びましょう。

縫合で止血したり、電気で焼いて止血したりします。

 

深いキズ

深いキズは縫合(針と糸でぬうこと)が必要かもしれません。
処置を受けるために受診しましょう。

『深いキズ』かどうかを見分けるのは、医療従事者でなければ難しいでしょう。
ご自身の経験に照らし合わせて、明らかに深い場合は受診を勧めます。

皮下組織まで及んでいるキズは、縫合が必要です。
黄色い粒のような皮下脂肪が見えているなら、皮下組織に及んでいます。

筆者自身は、経験の浅い研修医などに説明するとき、『革製品』に例えることがあります。
革製品に擦り傷がついても、穴が空いていないので、縫合の必要はありません。
しかし革製品に深い傷がついて、穴が空いている場合は縫合が必要です。

深くても数ミリの小さいキズであれば、自然に塞がることが多いです。
ただし感染するリスクがあるので、十分に水洗いした上で受診することをおすすめします。

 

汚れたキズ

土や砂が中に入ったキズは、感染するリスクが高いです。
屋外のものでできたキズは、多くの場合『汚れたキズ』にあたります。

このようなキズの場合、とくに水洗いが重要です。
キズの内部を洗い流すように、大量の水で洗いましょう。

傷口に土や砂が入った場合、破傷風の予防が必要です。
破傷風は命に関わる感染症です。

10歳までは予防接種による免疫が残っていますが、それ以降は破傷風に対する免疫がなくなっていることが多いです。
『破傷風トキソイド』という予防注射を受けることで、破傷風の感染を予防します。
あまりにも汚染が強い場合(農機具が刺さったキズなど)は、『破傷風免疫グロブリン』が必要なこともあります。
どちらも医師の判断で投与するかを決めなければいけませんので、『土汚れ』をともなうキズなら受診しましょう。

破傷風だけでなく、一般的な細菌が感染することも問題になります。
汚染の強さによって、抗生物質(殺菌する薬)が必要なこともあるので、必ず受診してください。

 

噛み傷(動物やヒトの歯によるキズ)

動物に噛まれたキズは、感染する可能性が非常に高いので、受診が必要です。

よくあるのはイヌやネコに噛まれたキズです。
ヒトに噛まれた場合も、噛み傷です。
ヒトによる噛み傷が最も汚染が強く、感染しやすいと言われています。

擦りキズ程度の噛み傷なら、水洗いだけで問題ないことが多いですが、深いキズは受診が必要です。
糖尿病などで感染症に弱い人は、浅い噛み傷でも慎重に経過を見てください。
キズの周囲が熱っぽくなったり、赤みや痛みが強くなったら、すぐに受診しましょう。

筆者は噛み傷を診る場合、キズの周囲に麻酔し、汚染した部分を切り取ってから十分に水洗いします。
そしてキズは縫わずに、止血してガーゼなどで保護します。(縫うと内部に細菌がたまるからです)
さらに感染予防のために、抗菌薬を処方します。
噛み傷に対しては、これくらい念入りな感染対策をしています。

 

美容的に問題があるキズ

顔のキズなど、傷跡が見た目の問題となるケースで、キレイにキズを治したい方は形成外科の受診をおすすめします。
特に縫合などの処置が必要な場合は、形成外科の医師に治療してもらうのが良いでしょう。

性別や年齢を基準に判断するよりも、自分が「キレイに治したい」と思った場合は、形成外科を受診しましょう。

1-2日経過したキズでも遅くありません。

 

キズが悪化しやすい人

次の項目に該当する方は、キズが治りにくく、また感染しやすいです。

高齢で皮膚が弱い
糖尿病
ステロイドを使用している
肥満
慢性腎不全

 

キズが熱を持ったり、はれて痛みをともなう場合は感染している可能性があります。
そんな時は医師の診察を受けましょう。
抗菌薬や切開などの治療が必要かもしれません。

 

まとめ

この記事では自分で出来るキズのケア、そして受診が必要なキズについて解説しました。

キズの管理は2段階です。
1段階目は、自分でできる水洗い、圧迫止血です。
2段階目は、医師に治療してもらうこと。縫合や薬の処方が含まれます。

この記事の目標は、キズの管理の1段階目を適切に行えるようになり、必要に応じて2段階目の受診ができるようになることです。

 

 

まとめ

すべてのキズは、水道水で傷口を洗い流しましょう。

出血しているキズは、圧迫することで止血しましょう。きれいなガーゼ、タオル、ティッシュなどを使いましょう。

キズは治るまで清潔にしましょう。少なくとも1日1回、できれば3回の水洗い(水道水)が有効です。絆創膏やガーゼで保護しましょう。

勢いよく出血するキズ、皮下組織まで及ぶ深いキズ、土などで汚れたキズ、動物に噛まれたキズは受診が必要です。

キレイにキズを治したい場合は、形成外科を受診しましょう。時間が経っていても受診する価値はあります。

 

 

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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