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運動の基本と始め方

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別の記事で運動が健康によい影響を与えることを、エビデンスとともに確認しました。
(読んでいない方は ぜひ読んでみてください)

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運動することのメリット

健康的な生活の要素に『運動』があります。 では運動することで得られるメリットは何でしょうか? ここでもデータとエビデンスから確認していきたいと思います。 歩くこと、運動することで健康になる意味を感じて ...

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この記事では運動の基本についてお話します。
健康に役立つ運動は、どのような種類があり、どのような意味があるのか。
また、ほとんど運動をしていない人が運動を始め、習慣にしていくにはどうすればよいのか。
これらのテーマをエビデンスとデータを紹介しながら説明していきます。

 

この記事の重要メッセージ

健康づくりのための運動には、有酸素運動とレジスタンス・トレーニングの2種類があります。

有酸素運動は心肺機能の向上に役立ち、レジスタンス・トレーニングは生活するための筋肉の力を向上させることができます。

1日に 30分の有酸素運動をすることで、肥満になることが避けられ、脳卒中や心臓血管疾患のリスクを下げることができ、健康寿命を得ることができます。

 

運動の種類

まず2種類の運動を紹介します。
『有酸素運動』と『レジスタンス・トレーニング』です。

そして運動の前後で行いたい『ウォームアップ』と『クールダウン』についても説明します。

 

有酸素運動

適度な運動負荷で、時間をかけて行う運動です。
30分間のウォーキングやジョギングをイメージしてください。
有酸素運動は英語で aerobicと言います。
エアロビクスという言葉を聞いたことがあると思いますが、エアロビクスでも時間をかけて運動を継続します。

有酸素運動は心臓や肺の機能を高めます。
血液の循環と、呼吸の機能を高める運動です。

有酸素運動の中にはウォーキングやジョギング、ランニングが含まれます。
他にも自転車でのサイクリング、水泳、山登り、多くのスポーツが該当します。

有酸素運動は心臓と肺の機能を高める運動ですので、進んでいくと持久力が得られます。
走ることであれば、より速く、より長い時間走ることができ、より長い距離を走ることができるようになります。
速歩きのようなきびきびしたウォーキングから、20〜30分のジョギング、ランニングを経て、42.195kmのフルマラソンを走るように上達していくことを目指します。

 

有酸素運動の強さ METs (メッツ)

有酸素運動にはウォーキング、ジョギング、ランニングなど、強さが異なる運動があります。
激しい運動の方がエネルギーを消費しますが、それだけ体への負荷が大きくなります。

有酸素運動の強さを表す指標に METs (メッツ)があります。
Metabolic EquivalenTsの略で、意味するところは代謝するエネルギー換算です。
安静時を 1 METsとして、それぞれの運動が何倍のエネルギーを消費するのかを表しています。
例えば、歩行で 3〜4km/h の場合、2.5 METsとなります。

安静時に1時間で消費するカロリーは、男性で約 70kcal、女性で約 60kcalです。
それぞれの運動に対応する METs値は、その運動を 1時間行った場合の消費カロリーを推定するのに役立ちます。
もちろん1時間の運動の間に、ペースの変動や環境の変化があるため、正確な消費カロリーを表すわけではありません。
しかしカロリー計算は、おおよその計算で十分です。

運動とMETsの表を2種類、外部リンクで紹介します。

『改訂版「身体活動のメッツ(METs)表」』です。

 

英語でのMETs表です。
PDFになっています。

METsの運動強度の目安は以下の通りです。
軽い運動: 3.0 METs 以下
中等度の運動: 3.0〜6.0 METs
活動的な運動: 6.0METs 以上

日常に取り入れやすい運動を抜粋します。

METs 運動
2 ゆっくり歩行、ストレッチ、ヨガ
スーパーマーケットでの買い物
3 4〜5km/hの歩行、軽いサイクリング
トランポリン、趣味レベルのバレーボール
釣り、家の掃除、子供と遊ぶ
ペットの散歩、ボウリング
Wii Fitやリングフィットアドベンチャーなどの身体運動ゲーム
4 ゴルフ、卓球
多くの筋力トレーニング
サーキット・トレーニング
ガーデニング、ガレージや歩道の掃除
5 6〜7km/hの速歩き
多くの農作業
6 エアロビクス、水中運動
雪かきなどシャベルでの仕事
7 坂道を登る、多くのダンス
趣味レベルのサッカー
8 8km/hのジョギング、20km/hのサイクリング
バスケットボール、登山、階段を登る
9 坂道を登るサイクリング
水泳(競技やトレーニング)
10〜 10km/hのランニング (10METs)
12km/hのランニング (12.5METs)
16km/hのランニング (16.0METs)
柔道・空手・テコンドー (10METs)
サッカーの試合 (10METs)
縄跳び (12METs)

 

運動初心者の方、運動する習慣が無い方が運動を始める場合、 3METs以下の運動で 1日 30分程度、週に 2〜3回あたりから始めることが推奨されています。
無理なく継続できるレベルから開始し、徐々にステップアップしていきましょう!

 

レジスタンス・トレーニング

レジスタンス・トレーニングとは抵抗を使った運動のことです。
筋力トレーニング、いわゆる筋トレはレジスタンス・トレーニングにあたります。

レジスタンス・トレーニングでは特定の筋肉を鍛えることができます。
骨や関節が強くなる効果も期待できます。

レジスタンス・トレーニングの例を挙げます。

自重トレーニング:重力と体重を利用する
フリーウェイト・トレーニング:ダンベルやバーベルなどを使う
マシン・トレーニング:ジムなどで器具を使って行う
弾力の強いバンドなどを使ったトレーニング

 

どのやり方が優れているというエビデンスはありません。
それぞれの運動にメリットがあり、趣味や生活環境によって利用できるものも異なります。
自分に合ったやり方でやりましょう。

レジスタンス・トレーニングの目的

上記の運動からレジスタンス・トレーニングは筋肉を大きくするイメージを持たれるかと思います。
たしかにボディービルダーが行うのはレジスタンス・トレーニングで、大きな筋肉を育てるのに役立ちます。

しかし、当サイト Save Bookでレジスタンス・トレーニングを扱う目的は、健康な生活に役立てることです。
十分な身体機能で人生を過ごすことが目的です。

例えばスクワットをするのは、歳をとっても健康に歩き、階段を登り降りすることを目指しています。
重要なのは体重を支えて運ぶ下半身、といったシステムでトレーニングすることです。

腹筋や背筋を強くするのは体幹を安定させるためです。
大胸筋は起き上がりや、生活の中である程度重いものを押すためです。

特定の筋肉をターゲットに大きくするのではなく、健康的な生活をするために、運動システムとしてトレーニングを行います。

 

レジスタンス・トレーニングでマッチョになるのか?

体型が変わることを心配される方がいますが、通常はマッチョにはなりません。
ボディービルダーのような体型になるには、人生の多くの時間をかける必要があります。
それはレジスタンス・トレーニングだけではなく、食事や減量、そして生活での活動に配慮して、やっと到達する体型です。
ボディービルダーの姿はたゆまぬ努力の結晶と言えるでしょう。

健康的に生きるためのレジスタンス・トレーニングは、あまり体型の変化は伴いません。
運動経験がない方がだんだんと強いレジスタンス・トレーニングができるようになる場合、むしろ身体が美しく引き締まるようになります。

 

ウォーム・アップとクール・ダウン

運動の前には5〜10分のウォーム・アップを行い、運動の後には5〜10分のクール・ダウンを行います。

ウォーム・アップはラジオ体操のような動的運動が推奨されます。
ウォーム・アップを行うことで、柔軟性と関節の可動域が改善し、運動中のダメージを予防することができます。
また筋肉への血流を増やしたり、代謝のペースを上げることで、運動パフォーマンスの向上や、消費カロリーの増加も得られます。

ちなみにウォーム・アップでの静的ストレッチは推奨されません。
静的ストレッチとは腰や股関節の柔軟性を高める目的で、数十秒の間、同じ姿勢で一方向に関節を曲げるストレッチのことです。
逆に怪我が増加するという報告があります。

クール・ダウンは軽いジョギングや、同じくラジオ体操のような運動を行います。
血流量を緩やかに安静レベルに戻していくことができます。
運動による疲労を軽減する効果があります。
さらに運動後に起こることがある失神を防ぐ効果もあります。

 

運動を習慣にするために

ここまでに運動の基本について説明しました。
ここからは運動を生活に取り入れ、習慣にする方法を説明していきます。

 

時間の確保

時間の確保は運動を続ける上で大事です。
すなわち、生活に運動を取り入れるタイミングを決めることです。

ほとんどの人は仕事や学校のため、その時間に運動することはできないでしょう。
提案できるのは、通勤や通学に歩く時間を取り入れることです。
職場や学校まで距離がある駅・駐車場を選び、歩く時間を増やすことができます。
可能なら速歩きをすると、運動の効率は高まるでしょう。

また家族の理解が得られているか、ということも運動時間の確保に重要です。
確保したい運動時間を家族に伝えておくのがよいでしょう。
健康のために適切な運動時間を確保することが大事であることを、当サイトを見せて理解してもらうのも有効かもしれません。
一緒にできる運動であれば、家族と行うのも良いでしょう。
家族で運動のメリットを理解し、家族で健康的なライフスタイルになれれば最高です!

 

運動できる体調と環境

体調の良くないときの運動は避けましょう。
特に熱が出ている時は、体温コントロールが難しくなります。

また運動に伴う症状にも注意が必要です。
胸の痛みや締めつけ感、異常な息切れや動悸を感じた時は運動を中止しましょう。
これらの症状は、心臓や肺に異常があるかもしれないので、運動によって症状が強く出る場合は医師の診察を受けてください。

環境の状態にも注意が必要です。
特に暑い環境で運動することは、熱中症や運動関連熱障害 (exertional heat illness)のリスクが高まって危険です。
また暑い環境で運動するメリットを示すエビデンスはありません。

寒い環境にも注意が必要です。
寒い場合は服装を厚くするなどの工夫で、体温調節できるようにすることを推奨します。
寒い環境では運動パフォーマンスが落ちますので、体温が下がらないように注意してください。
日本ではあまりありませんが、ウィンタースポーツなどでの凍傷は避けましょう。

寒い環境では、狭心症などの症状が出現しやすくなることを示す研究があります。
狭心症や心筋梗塞を起こしたことがある人は、寒い環境に注意が必要です。
(Circulation. 1989: PMID 2713970)

24名の安定狭心症を持つ人を対象に、-8℃と20℃の環境でトレッドミル負荷(ルームランナーでの走行)をかけるテストを行いました。
心電図を測定しながら運動させると、寒さに敏感な人では -8℃の環境で狭心症の心電図変化が出るまでの時間が短くなりました (169秒 vs 244秒)。
安定狭心症の場合は治療薬を服用しておくことで運動負荷に耐える心機能が維持されることも示されましたが、危険な心臓発作などを防ぐほどの効果は示されていません。

 

あたらしく運動を始める場合の始めかた

運動するための基礎体力を作っていきましょう。
前述の有酸素運動で、軽い負荷から始めます。

ほとんどの人が運動を始めるときにできるメニューを紹介します。

速歩きを、週に3回、1回あたり 30分

このような運動から開始しましょう。
慣れてくると、徐々に運動の強さを増やしていきます。

有酸素運動の決め方には3つの要素があります。
・頻度:週に 3回
・強さ:会話が出来る程度での速歩き
・時間:1回あたり 30分

有酸素運動を進めていく場合、これら3つの要素のそれぞれを強めていきます。

 

仲間を作る コミュニティーに入る

仲間がいると運動を続けやすくなります。
家族や友人と、運動について話し合って見ましょう。
共通の運動をしていると、それが共通の話題になります。

あなたがジムに通っているのであれば、ジムで運動する仲間を見つけてもいいでしょう。
決まったトレーナーに指導してもらうのも有効です。

また、歩数計を使うことで、一日の歩数が増えるというデータがあります。
記録して見ることは楽しいことです。
歩く習慣を楽しくするために、歩数計アプリを利用するのもよいでしょう。
(JAMA. 2007: PMID 18029834)

この研究では2,767人を対象にデータを集めています。
平均年齢は 49歳、85%が女性でした。
歩数計を使っていない人に比べて、歩数計を使ったグループでは 1日平均で約2,500歩多く歩いていました。
また、18週間の観察期間で、BMIが平均で 0.38減っていることも確認されました。
さらに血圧は約 4mmHg減っており、この効果は歩数が増えるほど大きくなりました。

 

まとめ

ここでは健康のための運動の概略を説明し、運動するときの注意点、初心者の始め方を紹介しました。
ポイントをまとめます。

まとめ

有酸素運動は心臓と肺の機能を高めるのに役立つ。METs (メッツ)で負荷を理解し、少しずつ強く長い運動ができるように進めていく。

レジスタンス・トレーニングは筋肉を強くするトレーニング。いわゆる筋トレ。体を動かすシステムとして、大きな動きの中でトレーニングすることが大事。

ウォーム・アップとクール・ダウンをそれぞれ5〜10分行うのが良い。運動のパフォーマンスを向上させ、消費カロリーを増加させ、疲労を和らげてくれる。

健康のために運動することを、家族に理解してもらう。運動する仲間がいれば楽しく続けることができる。

他にも運動のメリットとして紹介したいことがあります。
また有酸素運動もレジスタンス・トレーニングも、医学の観点からのエビデンスが蓄積しています。

それらについては別の項目で説明したいと思います。

運動することで確実に健康になれます。
それはエビデンスで明らかになっていることですから。
そして気分も良くなります。
まずは歩くことから始めましょう!

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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