救急・応急処置

鼻血の正しい止血法 そして誤解

 

 

鼻血の原因

初めて鼻血が出た時は、びっくりするでしょう。
しかし鼻血は特別な現象ではありません。
約6割の人が、人生で1回以上の鼻血を経験します。
鼻血は誰にでも起こります。

鼻の穴(鼻腔; びくう)の粘膜には血管が豊富です。
鼻腔の血管が傷つくことで、鼻血が出ます。

最も多い原因は『鼻ほじり』です。
鼻をかんだときに出血することもあります。
鼻血が出やすくなっている場合、外から鼻をこするなどの弱い刺激でも出血することがあります。

鼻の穴の、指が届く距離に、キーゼルバッハ部位という血管が豊富な部位があります。
上図の丸で囲まれた部分です。
鼻の仕切り(鼻中隔)の側にあります。
血管が豊富なため、鼻ほじりなど少しの刺激で出血を起こしやすい部位です。

 

鼻血の止血法

鼻の付け根には、固い骨(鼻骨)があります。
鼻骨を左右からつまみ、そのまま下に降りていきます。
少し下に降りると、やわらかくて鼻の穴を塞げるところがあります。
この部分を指で押さえ続けることで、ほとんどの鼻血を止めることができます。

鼻の穴が塞がるように、指で圧迫しましょう。
呼吸は口でしてください。
顔は軽く下向きです。
強くつまむ必要はありません。
鼻が閉じるくらいのチカラでOKです。
ちゃんと圧迫できていれば、血は垂れてこないはず。
この押さえ方で10~20分、圧迫を続けましょう。
その後、ゆっくり指を離して、鼻血が止まっていればOKです。

 

止血の誤解1 鼻骨を圧迫する

「鼻をつまんでいたけど止まらない」と言って、救急外来を受診する患者さんがいます。
多くの場合、圧迫のやり方が適切ではありません。

間違った圧迫の多くは、鼻の付け根の硬い部分、つまり骨の上を圧迫しています。
鼻の付け根をつまんでも、鼻血は止まりません。
出血している部位が圧迫できていないからです。

鼻の硬い部分から、やわらかい部分に変化する場所が正解です。
つまむと鼻がふさがり、指の上の方に鼻骨を感じる位置で押さえましょう。

鼻の出口に近い部分では下すぎます。
鼻骨のすぐ下をつまんでください。

 

止血の誤解2 ティッシュを詰める

鼻にティッシュを詰めることも、良いやり方ではありません。

マンガなどでティッシュを詰める表現があるからでしょうか、ティッシュを詰めて止血しようとする患者さんは多いです。

実際には、ティッシュを詰めることで止血される場合もあります。
ですがティッシュを取り出すとき、鼻の粘膜に摩擦が加わって、再び出血することがあります。

ティッシュを詰めるよりも、鼻を外から指でつまむ方法がベストです。

 

止血の誤解3 鼻を冷やす

鼻の周囲を氷などで冷やして止血しようとする患者さんもいます。
このやり方は間違いです。

液体である血液を冷やすことで、固まりやすくなるというイメージがあるのかもしれません。

血液が固まる機能は、通常の体温に近い温度で作用しています。
冷やすと逆に血液が固まりにくくなり、止血しにくくなります。

温めたほうがよい、という訳でもありません。
冷やしたり温めたりしないのが正解です。

 

止めにくい鼻血 受診を要する鼻血

患者さんの特性や、鼻血の原因によっては止めにくい場合があります。
基本的な止め方は同じですが、止血しにくい点に注意が必要です。

適切な方法で圧迫しても止血できない場合や、大量に出血した場合は、受診する必要があります。

 

抗血栓薬を使用している場合

心筋こうそくや脳こうそくになったことがある患者さんは、アスピリン(バイアスピリン)やワーファリンなどの薬を使用していることがあります。
これらの薬は血液のかたまり(血栓)を生じにくくする薬ですが、止血しにくい状態にもなります。

アスピリンによって鼻血が出やすいかどうかは、確定的なエビデンスがないようです。
しかし『止血しにくさ』には確実に影響しています。

抗血栓薬は、心筋こうそくや脳こうそくの再発予防に重要な薬です。
自己判断で中止すべきではありません。
頻繁に鼻血が出る場合は、主治医の先生と相談してください。

 

後方からの出血

先に述べたように、多くの鼻血は鼻腔の前方から出血します。
キーゼルバッハ部位は鼻の前方にあります。

後方からの鼻血の場合、出血点を圧迫することが困難です。
そのような場合、鼻にタンポンを詰めるなどの治療が必要です。

適切に鼻腔が塞がるような圧迫の仕方をしても、勢いが衰えない出血の場合、後方から出ていることがあります。

後方からの出血は稀ですが、止血のために受診が必要です。

 

大量に出血した場合

大量の鼻血を定義することは難しいですが、あまりにも出血量が多いと、危険な状態になることがあります。

ふらつき、冷や汗、動悸(脈が速くなる)を自覚した場合は、大量に出血した可能性があるので、受診をおすすめします。

 

鼻血の再発予防

鼻血が出た後、しばらくは出血しやすい状態になります。
5日くらいは出血しやすい状態にあると考えて、注意して生活するようにしましょう。

鼻を触らないように心がけましょう。
鼻ほじりや鼻かみは避けましょう。

乾燥していると鼻血が出やすくなります。
部屋を加湿しましょう。

 

まとめ 鼻血の正しい止血法

この記事では鼻血の正しい止血法、その後の管理方法を解説しました。

大事な点をまとめます。

まとめ

鼻血は誰にでも起こります。鼻の中のキーゼルバッハ部位というところから出血します。

鼻血が出たら、少し下を向き、鼻を塞ぐようにしてつまみます。10~20分、つまんで止血します。

正しく圧迫しても止血できない場合は、病院を受診しましょう。出血しやすい体質の人は、止血が難しいことがあります。

鼻血が出ると、しばらくは再発しやすくなっています。5日くらいは鼻を安静にしましょう。

 

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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