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飲酒と健康リスク - ベストな飲み方のエビデンス!

wine

飲酒は食文化の一部です。
生活に楽しみや彩りを与えるとともに、過剰なアルコールは大きな健康リスクの原因となります。

この記事ではアルコールが健康にどのように関係しているのかを、重要なエビデンスを紹介しながら解説します。
健康に生きるためにアルコールとどのように付き合えばよいかを明快にお伝えします。

この記事の重要メッセージ

少量のアルコールを楽しむ飲酒習慣は、健康維持に対して大きな問題はありません。
『少量のアルコール』とは、週に 100g以下のアルコール量です。

健康になるためにアルコールを飲む、という考え方は間違いです。

今アルコールを飲まない人は、今後もアルコールを飲まないのが健康維持には最適です。

 

アルコールと健康のエビデンス

これまでにもアルコールと健康の関係を調べた研究は数多くありました。
研究の結果も様々で、大量の飲酒が悪いこと以外は明確な関係性は見いだされていませんでした。

2018年、アルコールに関する大きなインパクトをもつ論文が出現しました。
Lancet (ランセット)というトップクラスの権威を持つ医学誌に、2つのアルコール関連の論文が掲載されました。
それらは現状で、アルコールの健康影響についての結論、と呼べるものです。

ここではその 2つの論文が示したエビデンスをもとに、アルコールと健康について解説します。

 

エビデンス 1 最も健康に良い飲酒量はゼロである

この研究は 1990~2016年の期間に集計された、世界各地のデータベースを統合して解析した研究です。
長い期間にわたる世界中のデータをまとめ、アルコールの健康影響について調査しました。
ビル&メリンダ・ゲイツ財団が支援した研究です。
(Lancet 2018. PMID 30146330)

その結果、『最も健康を損なわないアルコール摂取量はゼロである』ことが明らかになりました。

一見すると当然のことのように感じられますが、この研究にはとても大きな意味があります。

アルコールは基本的には健康にマイナスの影響を与えることは明らかでしたが、少量であれば健康によい可能性も残されていました。
たとえば心臓血管疾患などは、少量の飲酒習慣でわずかにリスクが下がる、と言った研究結果がいくつかありました。
ただし、これらは全ての健康影響を十分に評価できていませんでした。
この疑問に答えを出したのが、ここで紹介する論文です。

論文の結論は重要なメッセージを伝えていますので、少し長めの引用をします。

アルコール摂取は世界的に主要な健康リスク因子の一つであり、大きな健康被害をもたらしている。我々はこの研究で、全ての原因をあわせた死亡率やがんのリスクは飲酒量とともに増加することを明らかにし、健康の損失を最も小さくするアルコール摂取量はゼロであることを明らかにした。この結果は世界的にアルコール摂取を管理する政策を見直す必要があることを示唆しており、世界人口レベルでアルコール消費量を減らす努力が必要であることを示している。

この研究では2016年時点で女性の死因の 2.2%、男性の死因の 6.8%にアルコールが関わっていると報告されました。

 

エビデンス2 健康リスクを最小にするアルコール量は週に 100g以下である

同じく 2018年に Lancet誌に掲載されたアルコールについての研究論文です。
こちらの論文では健康に関する影響が最小限となるアルコール摂取量を調査しています。
(Lancet 2018. PMID 29676281)

この研究もデータベースをあわせて約 60万人の人を調査対象にしています。
調査対象となった人々を、アルコール摂取量でカテゴリ分けしました。

調査の結果、アルコール摂取量の増加とともに全ての原因を合わせた死亡率は上昇する関係にありました。
もっとも死亡率が小さかったのはアルコール摂取量が 0~100g/週のグループでした。
心筋梗塞だけはアルコール摂取で発生率が少しだけ下がりましたが、脳卒中、心不全、その他の心臓血管疾患による死亡率は飲酒によって増加しており、アルコール摂取量の増加に伴って死亡率は増加していました。

心筋梗塞だけは発生率が下がった、という情報が全体像を難しくしていますが、ラフに言えばアルコール摂取によって心筋梗塞以外の理由で死亡するリスクが増加してしまう、ということです。

この研究はもう一つ具体的な数値を提供しており、アルコール摂取量によって減少する寿命の長さを示しています。
調査結果に基づいて、40歳の時点での飲酒習慣で短くなる寿命を解説します。
死亡リスクが最も小さかったアルコール摂取量 0~100g/週の人々を基準として、アルコール摂取量が 100~200g/週の人は寿命が 6ヶ月短くなり、200~350g/週の人は寿命が 1~2年短くなり、350g/週を超えている人は寿命が 4~5年短くなっていました。

 

アルコール濃度と飲酒量

ここまでは健康リスクを小さくするためのアルコール摂取量はゼロで、週に 100g以下の摂取までは大きな影響がないことを解説しました。

次に知っておくべきことは『自分が飲酒する場合、何グラムのアルコールを摂取しているのか』です。
飲み物として同じ量を飲んでいても、その中に含まれているアルコール量はアルコール度数 (濃度)によって異なります。

ここではアルコール度数とmL (cc)から計算されるアルコール量を表で示します。
また代表的なお酒の飲み方について、目安となるアルコール量を示します。

 

代表的なお酒とアルコール量

お酒ごとにアルコール濃度と一般的な飲み方 (量)があります。
それぞれの飲み方で摂取するアルコール量は何グラムになるのかを紹介します。

代表的なお酒の飲み方で、どれくらいのアルコール摂取量になるのかを確認しましょう。

 

ビール カクテル ワイン

ビール

ビールのアルコール度数は約 5%です。

缶ビール 350mlで 17.5g、缶ビール 500mlで 25g のアルコールが含まれています。
中ジョッキの量は 350~500mlなので、缶ビールの場合と同じアルコール量です。

 

日本酒

日本酒のアルコール度数は約 15%です。

日本酒 1合は 180mlですので、27g のアルコールが含まれています。
おちょこはサイズが様々ですが、一般的な 2勺おちょこで 36mlですので、5.4gのアルコールが含まれています。

 

焼酎

焼酎のアルコール度数は約 25%です。

焼酎グラス半分 (100ml)には 25gのアルコールが含まれています。

 

ワイン

ワインのアルコール度数は約 12%です。

グラスワイン 1杯は 125mlですので、15gのアルコールが含まれています。
ワインボトル 1本で 750mlですので、90gのアルコールが含まれていることになります。

 

ウイスキー、ブランデー

ウイスキーやブランデーは蒸留酒と呼ばれる種類のお酒です。
蒸留する過程でアルコール濃度が高くなります。
ウイスキーもブランデーも、アルコール度数は約 40%です。

ワンショット 30ml (1オンス)くらいで、12gのアルコールが含まれています。

 

 

アルコール濃度と飲酒量

代表的なお酒の飲み方とアルコール量について解説しました。
次にどれだけのアルコール濃度のお酒を何ml (cc)飲んだら、アルコール摂取量が何グラムになるのかを一覧にした表を示します。

50ml 100ml 300ml 500ml 1,000ml
5% 2.5g 5g 15g 25g 50g
10% 5g 10g 30g 50g 100g
15% 7.5g 15g 45g 75g 150g
20% 10g 20g 60g 100g 200g
30% 15g 30g 90g 150g 300g
40% 20g 40g 120g 200g 400g

 

お酒

 

アルコールと関連する健康問題

病気の中には特にアルコールとの関係が強いものがあります。
アルコール摂取量が多いとどのような病気のリスクが高まるのかを解説します。

 

アルコールと関連するがん

特定のがんはアルコールによって発症するリスクが高まります。

●アルコールによって発症リスクが高くなるがん
食道がん
頭頸部のがん(喉や首にできるがん)
肝臓がん
乳がん
大腸がん

 

アルコールで増加・悪化する病気

がん以外にもアルコールで増加する病気があります。
またアルコールが関係している病気は、飲酒によって悪化します。

●アルコールで増加・悪化する病気
アルコール性肝障害、肝硬変
膵炎
胃炎、食道炎
骨粗鬆症
高血圧
不整脈(心房細動など)
脳卒中

 

アルコールによる行動の問題

アルコールには判断力を低下させたり、行動が抑制できなくなる作用があります。
過度のアルコールは事故などの問題行動につながります。
特に飲酒運転は危険で、法律で罰せられますので絶対にやめましょう。
わずかなアルコール量でも事故を起こす確率は上がります。

アルコールが関係している暴力事件も起きています。

またアルコールは精神にも影響を与えます。
慢性的にアルコール摂取量が多い人は、自傷行為や自殺のリスクが高いことが知られています。

アルコールによって生活に支障を来している場合は、精神科医に相談が必要です。

 

アルコールを避けるべき人

少量の飲酒であっても避けるべき人がいます。

妊婦

妊娠中にアルコールを摂ると、お腹にいる赤ちゃんに悪影響があります。
生まれつきの異常(知的障害、奇形)を生じるリスクが増加します。

 

アルコール依存症の人

アルコール依存症の人は少量であっても飲酒するべきではありません。

 

アルコールに関連する病気がある人

肝臓や膵臓にアルコールに関連する病気がある人は飲酒すべきではありません。
それらの病気が悪化します。

ウイルス性肝炎による慢性肝炎の人は、飲酒による肝障害の度合いが強くなります。

 

飲酒を楽しむ

飲酒は食文化の一つです。
完全に文化から無くなることはないでしょう。

当ウェブサイトもアルコールの摂取をゼロにすることを主張する立場ではありません。
健康問題にならないように、適量のアルコールを楽しめるのが最適だと考えています。

 

コラム:筆者の飲酒習慣

コラムとして筆者の飲酒習慣についても紹介しておきます。

筆者が飲酒する頻度は平均して週 2回くらいです。
これには救急医として当直する日が多いことが関係していると思います。

飲酒する日は缶ビール 350ml を 1本、ということが多いです (アルコール 17.5g)。
ワインはグラス 1杯 (15g)のことが多いですが、2杯 (30g)飲むこともあります。

蒸留酒は飲めなくもないですが、積極的に飲むこともしません。

飲酒の際に一緒に食べる "おつまみ" はナッツ類を選んでいます。
大学生だったころなどはスナック菓子をおつまみにしていましたが、カロリーや塩分が多くなるので現在は避けています。

 

まとめ

この記事ではアルコール摂取量と健康リスクについて解説しました。

この記事のまとめです。

まとめ

健康のために最適なアルコール摂取量はゼロであり、健康リスクを生じないアルコール量は週に 100g以下である。

代表的なお酒の飲み方と、それに含まれるアルコール量を知っておこう。

アルコールによって発生しやすくなるがん、アルコールによって発生・悪化する病気がある。

妊娠中の方やアルコール依存症の方は僅かな飲酒でも避けるべきである。

みなさまがアルコールとうまく付き合って、楽しい食生活や人生を手に入れることができるようにと願っています。

 

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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