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肥満や過小体重による影響

weight loss

 

この記事の重要メッセージ

健康的な体重は BMI 18.5~25の範囲です。

健康的な体重を維持することは、見た目を良くすることの他に、死亡率を低下させる効果があります。

体重の増加は糖尿病やガンなどの発生リスクを増加させます。

 

再掲載:体重管理の目標 BMI 18.5~25

以前に健康的な体重管理の目標は BMI 18.5~25の範囲であることを、データを示しながら説明しました。

weight scale
体重管理の目標 - BMI

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あらためて身長ごとの体重管理の目標をお示しします。
以前の表を再掲載しますので、皆様にとっての適正な体重を確認してください。

 

BMIに対する体重 (kg)
身長(cm) BMI 18.5 BMI 22 BMI 25
130 31.3 37.2 42.3
135 33.7 40.1 45.6
140 36.3 43.1 49.0
145 38.9 46.3 52.6
150 41.6 49.5 56.3
155 44.4 52.9 60.2
160 47.4 56.3 64.0
165 50.4 59.9 68.1
170 53.5 63.6 72.3
175 56.7 67.4 76.6
180 59.9 71.3 81.0
185 63.3 75.3 85.6
190 66.8 79.4 90.3
195 70.3 83.7 95.1
200 74.0 88.0 100.0

 

 

肥満や過小体重による影響

ここでは肥満や過小体重によって、具体的にどんな影響があるのかについて、エビデンスを示しながらお話します。
先に全体的なイメージを掴むため、代表的な健康への影響を説明します。

BMI 25以上

過体重や肥満になると、心臓や血管への悪影響が表れます。
心筋梗塞や狭心症と言った心臓の病気、また血管の病気が増加します。
脳梗塞や脳出血といった脳卒中も増加することが知られています。
血管の病気に影響を及ぼす高血圧も増加します。

また代謝性の異常が現れやすくなります。
具体的にはコレステロールの異常や、糖尿病などの血糖コントロールの異常です。
これらも血管や臓器に悪影響を及ぼします。
また肝臓病や、特定のガンも増えやすくなります。

BMI 18.5以下

一方でBMI 18.5以下の過小体重では、たしかに死亡率が上がっていますが、健康への影響を特定するのは難しいのです。
どうして死亡率の増加に影響するのかについて、研究によって様々な考察がされています。
この死亡率は過小体重そのものによる影響ではなく、体重が減少する原因として隠れている病気があり、それが死亡率に関与している結果かもしれない、と考える説があります。
また過小体重は喫煙の影響を受けており、喫煙が死亡率に関連しているのかもしれません。
重要なのは、研究は何万人もの人を対象にデータをとってまとめたものなので、個別の原因は分からないことです。
ダイエットなどによらず、意図せず体重が大幅に減少する場合は医師に相談することをおすすめします。

 

体重による健康への影響、起こりやすさ

ここからは体重とそれぞれの健康への影響について、データを示しながら説明していきます。

 

心臓と血管の病気、脳卒中

まず心臓と血管の病気、脳卒中について説明します。
心臓の病気は心筋梗塞や狭心症といった病気です。
血管の病気は動脈硬化や、それに伴う血管の閉塞、大動脈解離などの病気です。
脳卒中は脳梗塞と脳出血のことで、これは脳の血管の病気です。

BMI 25以上で、心臓と血管の病気、脳卒中が増えることが複数の研究で示されています。
代表的なものとして、日本を含む東アジアの人を対象にした研究からのエビデンスを紹介します。
(BMJ. 2013: PMID 24473060)

40,791人の東アジア人について、約 10年間で心臓や血管の病気、脳卒中による死亡が発生するかを追跡しました。
すると BMI 22.5~24.9を基準として、BMIが 25以上になると それらの病気で死亡する確率が増加していました。
そしてBMIが大きくなるごとに、それらの病気で死亡する確率も増加していました。

BMI 22.5~24.9 25.0~27.4 27.5~29.9 30.0~32.4 32.5~34.9 35~50
1.0倍 (基準) 1.09倍 1.27倍 1.59倍 1.74倍 1.97倍

これらの病気による死亡率が、BMI 25を超えると増加していくことが分かります。
その予防のために体重を適正な範囲に管理することが有効と言えそうです。

また血管に悪影響を与える高血圧も、肥満によって増加します。
そして肥満に伴う高血圧や、体重の減量で改善しやすくなります。

これらの病気は命に関わることがありますが、命が助かった場合も後遺症を伴うことが多いです。
心臓の場合は息切れが起こりやすくなったり、疲れやすくなります。
脳卒中の場合は身体のある部分にマヒが起こったり、認知症の原因になったり、言葉が使えなくなったりします。
人生の質に大きく関わる要素に影響しやすいので、予防する価値が高いと言えます。

 

糖尿病(2型糖尿病)

2型糖尿病は上がりすぎた血糖値を下げるインスリンというホルモンの反応が低下することで、血糖値のコントロールが正常にできなくなる病気です。
この発症は肥満と強く関連しており、様々な病気を引き起こす原因にもなります。

ただ肥満が2型糖尿病の発症に関連するだけではなく、肥満を改善することで 2型糖尿病の発症率を下げることもできます。
ここでも健康的な範囲に体重を管理することが有効です。
それが有効であることをエビデンスで示します。
(N Engl J Med. 2002: PMID 11832527)

アメリカで行われた研究で、糖尿病にはなってないけれど血糖値が上昇している人 3,234人を対象に研究しました。
3つの介入を行い、それぞれの介入によって糖尿病の発症率がどのように変わるかを調査しています。
3つの介入とは、それぞれ以下のとおりです。

・プラセボ:つまり特別なことはしていません。
・メトホルミン:血糖値をコントロールする薬を内服させました。
・ライフスタイル改善のプログラム:体重を少なくとも 7%減量することと、週に少なくとも 150分以上の運動をすることをさせました。

研究対象となった人たちの平均 BMIは 34.0でした。
これらの介入によって、1年間に2型糖尿病を発症する確率に違いが見られました。
結果を表でお示しします。

介入方法 1年間での糖尿病の発症率
プラセボ 11.0%
メトホルミンの内服 7.8%
ライフスタイル改善のプログラム 4.8%

この研究では薬によって血糖値をコントロールするよりも、体重の減量と習慣的な運動が糖尿病の予防に役立つことが示されました。
糖尿病の予防に対しても適正な体重管理が役に立ちます。

 

脂質異常症

肥満になると脂質の代謝にも異常を起こしやすくなることが分かっています。

肥満によって、いわゆる悪玉コレステロールと呼ばれる LDLコレステロールが増加します。
そして善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールは減少します。
この変化が心筋梗塞や狭心症の発症に関わっていると考えられます。

 

がん

肥満は様々な種類のがんの発生率を増加させることが分かっています。
肥満との関連が指摘されているがんをお示しします。

消化管のがん(食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がん、胆のうがん、膵臓がん)
女性のがん(子宮がん、卵巣がん、乳がん)
腎臓がん、血液のがん

 

肥満によるがんの発生率は、女性の方が影響を受けやすいことも知られています。

体重を適正に保つことで、発症を避けられるがんがあるかもしれません。
ただしがんの発生に関わる要素は数多く、肥満はその一つの要因に過ぎません。
がんについては体重以外にも気をつけるべき生活習慣があります。

 

骨や関節への負担

体重を支える骨や関節に、肥満は悪影響を及ぼします。
その負担を軽減するために、減量は役に立ちます。

高齢の女性に増加する圧迫骨折、つまり背骨の骨折があります。
これは体重を支える背骨に強い負担がかかることで発症します。
高齢で骨が弱くなったときに発症しやすくなります。
腰痛で動けなくなったり、ひどい場合は寝たきりになり、生活の質に大きく影響します。
生活能力を取り戻すためにリハビリが必要になります。

また体重を支える骨や関節に炎症を起こすことがあります。
体重による負担で関節に痛みを生じます。
これも体重を減量することで、改善できます。

 

その他

肥満は他にも多くの点で健康に悪影響を及ぼします。

睡眠の質を下げる、睡眠時無呼吸症候群の発生率を大きく高めます。
肥満によって呼吸の通り道が狭くなることが原因ですので、減量することが解決策になります。

女性の妊娠にも影響します。
肥満によって月経不順になり、妊娠する確率が低くなることが知られています。
ただし不妊には様々な原因があるため、肥満だけですべてが説明できるわけではありません。
不妊症については産婦人科で相談することを強くおすすめします。

また肥満はメンタルにも影響します。
うつや認知症が肥満によって増加すると言われています。

 

代謝の異常がない肥満

ここまでに肥満が健康に負の影響を与えることを説明してきました。
糖尿病やコレステロールの異常に関連することが分かりました。

もしかすると、「糖尿病やコレステロールの異常がなければ、肥満自体は悪影響がないのでは?」と疑問に思った方もいるかもしれません。
その疑問に答える研究があるので紹介します。
結論を先に言いますが、肥満そのものが健康にリスクを与えている、という結果でした。
(Ann Intern Med. 2013: PMID 24297192)

この研究では61,386名の患者を調査しました。
BMIでは 3つのカテゴリ、つまり BMI 24.9以下の正常、25~29.9の過体重、30以上の肥満に分けました。
また代謝については健康、非健康の 2つのカテゴリに分けました。
3 × 2 = 6 つのグループでそれぞれ観察しました。
死亡または心臓と血管の病気が発生したかどうかを 10年間のフォローアップで調べました。

この調査では代謝的に健康かつ正常体重の人を基準にすると、代謝的に健康かつ肥満の人のリスクは 1.24倍になっていました。
研究の結論は、肥満であること自体が健康に対するリスクであり、健康的な肥満というものは無いのではないか、というものでした。

 

まとめ

体重の管理によって、様々な健康への影響があることを紹介しました。
そしてその多くは、体重を適正な範囲に管理することで、影響を減らすことができます。

適正に体重を管理することによるメリットは、人生の長い時間に影響します。
若い時期から健康的な体重を維持することは、人生における健康と幸福によい影響を与えると言えるでしょう。

体重を管理すること、特に体重を減らすことには、苦労と我慢が伴います。
少しずつで良いので、健康的な体重を目指して変わっていきましょう。
決して無理はしないでください。
医師に相談することも、助けになるでしょう。

 

  • この記事を書いた人

眞喜志 剛

Save Bookの運営者です。ウェブサイトを通じて、エビデンスに基づいた医学の知識を一般の方も使えるようにすることを目指しています。 救急医、集中治療医。 ドクターヘリで活動するフライトドクター。 2009年 奈良県立医科大学卒業。 2021年 名古屋商科大学大学院ビジネススクール卒業。 日本救急医学会専門医 | 日本集中治療医学会専門医 | MBA

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